第3回:ユーロの金利と最近の情勢について
ユーロは、米ドルに次いで世界で2番目に取引されている通貨ということはみなさんご存知かと思います。今回はそんなユーロについてや、ユーロを導入している地域についてもっと詳しく知りたい方向けにご紹介していきたいと思います!

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志摩力男(しま・りきお)氏 プロフィール: 慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダー、その後香港にてマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍。メルマガ志摩力男のグローバルFXトレード!で詳しく配信中。 |
意外と知らない?ユーロの特徴!
ユーロはナウでヤングな通貨!
ユーロという通貨は歴史が浅く、1999年に生まれた通貨です。そもそもユーロという通貨が生まれるきっかけとなったEU(欧州連合)も発足したのが1993年と他の国や地域と比べてつい最近です。公開時点でこのコラムを読んでいる20代前半の方は、もしかするとユーロと同い年かもしれませんね。
なぜユーロは世界で2番目に取引されているのか。
ユーロやEU(欧州連合)の歴史が浅いのに、なぜこんなに世界で取引されているの?と疑問を持った方も多いかと思います。確かに、通貨として歴史が長く信用があると好まれる傾向があります。逆に、いつ無くなるかも分からない国や得体の知れない通貨というのは取引したくないですよね。
しかし、歴史が浅いユーロはなぜかたくさん流通しています。
なぜユーロが世界で2番目に取引されているのか。
その理由は、経済規模にあります。
GDP世界第1位のアメリカも、経済大国になってから世界の基軸通貨として愛されるようになり、それ以前はイギリスのポンドが基軸通貨として愛されていました。
ユーロは、『EU加盟国だけどユーロは導入していないよ!』という国や地域もありますが、それを抜きにしても19ヵ国がユーロを法定通貨として導入していますので、これだけの国が集まれば経済規模もかなり大きくなります。そもそも経済規模が元々大きいGDP世界4位のドイツと第6位のフランスがユーロを導入していますので、それだけでも十分パワーがあります。
ユーロは強い子!けれどマイナススワップ・・・
前項でもお伝えしたとおり、経済規模も大きく非常に人気が高いユーロですが、実はユーロ買いポジションはマイナススワップということを皆さんはご存知でしょうか。※執筆時点。
新型コロナウイルスパンデミックの影響でさまざまな国がゼロ金利政策やマイナス金利政策を導入しましたが、ユーロはそれより以前にマイナス金利を導入しています。
また、最近ではロシアとウクライナ間の戦争の影響もかなりダイレクトに受けているため、ユーロはジリ安推移を続けていて非常に買いづらい状況が続いています。
ユーロについて有識者に聞いてみた!
アメリカに比べてニュースが入りづらく、たくさんの国の集まりなのでどういうニュースがユーロに影響するのか難しくて分からないという方の気持ちにお応えして、有識者の方にユーロとの向き合い方について質問してみました!※内容は執筆時点のものです。
逢坂みぁ(以下、みぁ):ユーロはどの国のニュースに反応するのか分かりません。ニュースの集め方について詳しく教えてください。
志摩力男(以下、敬称略): そもそもEUはたくさんの国の集まりのため、一つ一つの国ごとの政治状況について知るのはほぼ不可能で細かい国については知ることはできない。このことから、あまり政治のことは意識せずに、ECB関係者やその派生の発言にだけ集中している。
みぁ:ユーロを取引する際、注目すべき経済指標や注目すべき人物、影響しそうなニュースについて教えてください。
志摩: 最も影響力があるのはECB理事会のラガルド総裁の発言。ECBの中でも特に注目している。理事の人は多いので全員覚える必要はないし、全員同じように扱う必要はない。発言する人の国籍に注目してチェックするべき(〇〇中銀総裁、という形で肩書きなどが記載されている)。
ユーロ導入地域を南北に分けて、北側の国であるGDP第4位のドイツやオランダ、オーストリアの経済は規模が大きく、割と強いのでタカ派的な傾向があり、反対に、南側のイタリアやスペインやポルトガル、ギリシャなどについてはドイツ等ほど競争力がないのでハト派的な傾向がある。そして、南側の方がユーロ導入国の割合が大きいので、意見力が強い。
そのため、タカ派発言に引っかからないようにしたほうが良い。 注目すべき経済指標は、現在なら消費者物価指数(HICP)だったりドイツの製造業PMIが中心になるのではないかと考えている。そこが伸びると欧州全体が伸びてくると思われる。
みぁ:直近の相場展望についてです。ロシアとウクライナ間の戦争でユーロがジリ安推移していますが、一方で今後のECB理事会で2022年7月には利上げが開始されるのではないかというニュースを目にしました。利上げについて相場は織り込み済みとの声も耳にしますが、今後利上げは、どのようにユーロに影響するとお考えでしょうか。
志摩: これ以上のユーロ安は容認できないという発言があった。フランスは南北中間に立っているため、フランス出身であるラガルドECB総裁がタカ派・ハト派どちらにつくかが見極めポイント。判断に困ったらフランスの動向に注目した方が良い。利上げに関しては、年内にユーロの金利はプラスだろうと言われており、7、9月のECB理事会で立て続けに利上げする可能性が高い。昨今の物価上昇懸念からECBもFRBと同様に急いで利上げを行うのではないかと考えている。
ラガルド総裁などECBがタカ派になってきたが、欧州もイギリスもマイナス成長する可能性がある=景気後退。ポジティブな理由ではなく、インフレ率が高すぎて許容できなくなり、今利上げしてマイナス金利を止めておかないと今後利上げの機会がなくなる可能性があるため。 ちなみに、欧州は各国のCPIで給料が決まることが多いので、消費者物価指数と公務員の給料が連動する国も結構ある。フランスは特にそうでインフレが高まってくると賃金が高まることが予測されることも利上げの一因となっている。
みぁ:お答えいただいた中で『年内にユーロの金利はプラスになるだろう』とありましたが、今後ユーロをスワップ取引の1つの選択肢とするのはアリでしょうか?
志摩: ユーロが利上げしてプラス金利に転じたとしてもゼロ近辺ではあると思うが、ユーロを買ってスワップポイントがついてくるのは9月ごろになると思う。理由として、日本の金融政策が変更されることはしばらく無くマイナス金利を維持、欧州が0.25~0.5くらいまでに利上げすると思われるため。そのことから、8~9月にはキャリートレードがポジティブ、微妙にスワップがつき、12月にはしっかりついてくると思われる。ユーロが買いか?と言われると買えると思われる。日本円は弱いのでユーロ円も140円超えてくると思われる。
みぁ:お忙しい中、ご回答ありがとうございました!
まとめ
ユーロの歴史は浅いですが、ドイツやフランスといったGDP上位の2国がいるので経済規模はとても大きい通貨です。しかし、現行の金融政策ではマイナス金利を導入しており、その上、情勢不安からユーロは現状買いにくい通貨でもあります。 一方で、今後のECB理事会ではユーロの利上げが開始されるという噂もあり、年内にプラス金利になるかもしれないという声も聞きますので、みなさんも今後のユーロに注目してみてはいかがでしょうか!
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